価格の画面まで進むと、KDPセレクトに登録するかどうかのチェックが出てきます。

入ると得なのか、それとも縛られるのか。 判断材料をKDP公式の記載で整理します。結論から言うと、これは損得の問題ではなく「Kindleストア以外で売る予定があるか」を先に決める問題です。

KDPセレクトの中身

KDP公式の説明はこうです。

KDP セレクトは、お住まいの地域に関係なく、すべての著者が参加できる Kindle 本とオーディオブックを対象とした 90 日間の無料プログラムです。

[!NOTE] 表記の変更について(2026年10月24日確認): KDPのヘルプは現在、登録した本が入る読み放題を「Kindle+」と表記しています(一部のページには「Kindle Unlimited (KU)」の表記も残っています)。また、KDPセレクトの対象にオーディオブックが加わっています。この記事では、読者に通じやすい「Kindle Unlimited」の名前も併記しています。

費用はかかりません。登録すると付いてくるものが3つあります。

登録すると付いてくるもの

1Kindle+(Kindle Unlimited)に入る

  • KDPセレクトに登録する

満たすと: 読者が読んだページ数に応じてKDPセレクト グローバル基金からロイヤリティを得られる

2キャンペーンが使える

  • KDPセレクトの登録期間中である

満たすと: 無料キャンペーン(最大5日間)または Kindle Countdown Deals(期間限定の割引価格)のどちらか1種類。KCDはAmazon.co.jpでは使えない

3日本向けの70%ロイヤリティ

  • 希望小売価格が70%の要件を満たす
  • KDPセレクトに登録する

満たすと: 日本のマーケットプレイスで70%を選べる

KDP公式「KDP セレクト」「KDP セレクトの利点」の記載に基づきます。

KDP公式は登録の効果について「電子書籍またはオーディオブックを KDP セレクトに登録すると、自動的に Kindle+ に追加されます」と記載しています。無料キャンペーンについては「最大 5 日間無料で提供します」、Kindle Countdown Deals については「期間限定の割引価格で提供します」としています。

ただし、この2つは併用できません。

90 日間の KDP セレクト登録期間中は、本の無料キャンペーン、または Kindle Countdown Deal (KCD) のいずれかを実施できます

1回の登録期間で使えるのはどちらか1種類だけです。

ただし、日本で出版する人にとって大事な注記があります。

注: Kindle Countdown Deals は Amazon.com および Amazon.co.uk のマーケットプレイスでのみ実行可能です。Amazon.co.jp では販売されていません。

つまりAmazon.co.jp で売る本について選べるのは、実質的に無料キャンペーンの側です。

Kindle Unlimitedは読まれたページで決まる

ここが通常の販売と根本的に違うところです。KDPセレクトに登録した本がKindle Unlimitedで読まれた場合、ロイヤリティは売れた冊数ではなく読まれたページ数で決まります。

KDPはこの単位を KENP(Kindle Edition Normalized Pages) と呼んでいます。KENPレポートの説明では、レポートの列「Kindle+ の読んだページ数」を「電子書籍を借りた読者が読んだ KENP ページ数」としています。分配の原資は KDPセレクト グローバル基金です。月のKENPの集計は翌月15日ごろに確定するとされています。

2つの収入の立ち方の違い

通常の販売

1冊売れたら、その価格に応じたロイヤリティ

Kindle Unlimited

読まれたページ数(KENP)に応じて基金から分配

KDP公式の説明に基づく整理です。基金の分配単価は月によって変動します。

この違いから言えることが1つあります。Kindle Unlimitedでは「買われたけど読まれなかった」が収入にならない代わりに、「最後まで読まれた」が長い本ほど大きく効く構造になっています。ただし1ページあたりの単価は基金の規模と全体の読了量で毎月変わるので、事前に金額を見積もることはできません。

引き換えになるのは独占

ここが判断の本体です。KDP公式の記載はこうです。

Kindle 本フォーマットの本は、登録期間中は Amazon の独占販売である必要があります。ただし、印刷版、動画、オーディオ、またはその他の形式の本は他の場所で引き続き販売可能です

独占の対象は「Kindle本フォーマット」で、紙・オーディオ・動画は対象外だと明記されています。なお「KDP セレクトへの登録」のページは、同じ点を「90 日間の登録期間中、Kindle 本は KDP と公共の図書館でのみ販売可能です」と書いています。

登録期間中にできること・できないこと
  • Kindleストアで売る

  • 同じ本を他の電子書店(Kindle本フォーマット)でも売る

    登録期間中は独占の対象です。

  • 紙(ペーパーバック)を出す

    公式が「印刷版…は他の場所で引き続き販売可能」としています。

  • オーディオブック版を他で売る

    同じく対象外として挙げられています。

KDP公式「Kindle Countdown Deals」の記載に基づきます。判断は「損得」ではなく「他で売る予定があるか」です。

[!IMPORTANT] 同じ内容をPDFなど別の電子形式でnote・BOOTHで売れるかは、この記載だけでは判断できません。 公式の文は「その他の形式の本は他の場所で引き続き販売可能」としていますが、これが 「同一内容を別形式にしたもの」まで含むのかは書かれていません。やる前にKDPの規約で確認してください。 (当サイトは当初これを「できない」と書いていましたが、公式にその根拠は見つかりませんでした)

「他で売る予定がない」なら、独占は実質的な制約になりません。ここが分かれ目です。

判断はこう整理できます。

  • 他で売る予定がない(Kindleだけで出す)→ 独占はコストにならないので、入るほうが選択肢が増える
  • 他の電子書店やnoteでも売りたい→ KDPセレクトには入れない。日本向けの70%も選べなくなる

日本向けの70%とセットになっている

もう1点、日本で出す人には重要な事情があります。KDPは70%オプションについて、日本・インド・メキシコ・ブラジル向けの希望小売価格には「KDP セレクトに登録されていることが必要」と案内しています。

つまり日本の読者に70%で売りたいなら、KDPセレクトに入る必要があるということです。価格の話はロイヤリティと価格の決め方で扱っていますが、判断としてはひと続きになります。

途中で抜けられるか

KDP公式の「KDP セレクトの取り消し方法」に、期限が明記されています。

登録期間の開始から 3 日以内に登録を取り消すことができます。3 日間を経過した場合は、Amazon までお問い合わせください

自由に抜けられるのは最初の3日だけです。それ以降は問い合わせになるので、実務上は「90日は続くもの」として決めるのが安全です。あわせて次の制約も記載されています。

予約注文の Kindle 本を KDP セレクトに登録した場合、予約注文の Kindle 本が発売されるまで登録を取り消すことはできません

3日を過ぎたら自分の操作では抜けられません。登録は「90日決める」つもりで押してください。

そして90日の期間が終わると、既定では自動的に更新されます。KDP公式の「KDP セレクトへの登録方法」の記載です。

お客様の利便性のため、KDP セレクトに登録されている Kindle 本およびオーディオブックは、自動更新の設定をオフにしない限り、すべて自動で更新されます。

止めるには、本棚の「KDP セレクトへの登録の管理」で「この本の KDP セレクトへの登録を継続する」のチェックボックスをオフにします(KDP公式「KDP セレクトの取り消し方法」の手順)。独占をやめるつもりなら、次の90日が始まる前にここを外しておく必要があります。

まとめ

  • KDPセレクトは90日間の無料プログラム。費用ではなく独占が引き換え
  • 独占の対象はKindle本フォーマット。紙・オーディオ・動画は対象外と公式に明記されている
  • 付いてくるのはKindle+(Kindle Unlimited)入りと、無料キャンペーン(最大5日間)またはKindle Countdown Deals のどちらか1種類。KCDはAmazon.co.jpでは使えない
  • Kindle Unlimitedのロイヤリティは読まれたページ数(KENP)で決まる。冊数ではない
  • 日本向けの70%ロイヤリティにはKDPセレクトの登録が必要とKDPが案内している
  • 判断の軸は損得ではなく「Kindleストア以外で売る予定があるか」
  • 自分で取り消せるのは登録開始から3日以内。それ以降はAmazonへの問い合わせになる
  • 既定では90日ごとに自動更新される。やめるなら「この本の KDP セレクトへの登録を継続する」をオフにしておく

次は出版審査で止まるときです。価格の話はロイヤリティと価格の決め方に戻れます。