ハンドメイドは「趣味で作っていたものが売れるようになった」という始まり方が多い働き方です。だから開業届の話は、どこまでが趣味で、どこからが事業なのかの線引きから始まります。
趣味の延長と事業の線引き
判定軸は通達35-2の「社会通念上事業と称するに至る程度か」で、帳簿の保存が重要な材料です。ハンドメイドに当てはめると、年に数回、余った作品を売る程度なら事業とは言いにくく、継続的に制作して販売し、売上と材料費の記録を付けているなら事業側に近づきます。
継続的に制作して出品している
売上と材料費の記録を付けている
帳簿の保存は判定の重要な材料です。
年に数回だけ余り物を売る
事業と称する程度とは言いにくい形です。
通達35-2の判定軸に沿った整理です。個別の判定は税務署に確認してください。
材料の在庫があるから青色申告の価値が出やすい
ハンドメイドは材料の在庫を持つ働き方です。買いだめした材料は買った年の経費にならず、売れた作品に使った分だけが売上原価になる(経費の記事)ので、帳簿が整っていないと所得の計算そのものができません。逆に帳簿が整うと青色申告特別控除の価値が出やすい形です。青色申告承認申請書は開業届より先に締まることがある(開業から2ヶ月以内)ので、始めると決めたら先にこちらの期限を見てください。
食べ物とコスメには開業届とは別の許可の定めがある
ハンドメイドで売るものが食べ物か肌に使うものになると、開業届とは別の法律が出てきます。どちらも税務署ではなく、別の窓口の手続きです。
手作りのお菓子(食品衛生法)
食品衛生法は、政令で定める営業について、都道府県が施設の基準を定め(54条)、その営業をする人に許可を求めています。
前条に規定する営業を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。
政令(食品衛生法施行令35条)が挙げる営業の中に、ハンドメイドで最も当たりやすいものがあります。
十一 菓子製造業(菓子(パン及びあん類を含む。)を製造する営業をいい、第二十六号又は第二十八号に該当するものを除く。)
許可は営業の施設が基準に合うかで判断される仕組み(55条2項)なので、「どこで作るか」が論点の中心になります。
手作りコスメ(医薬品医療機器等法)
石けん・リップ・バーム・アロマのように肌に使うものは、薬機法の「化粧品」の定義に近づきます。
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。
そして化粧品には、作る側と売り出す側の両方に許可の定めがあります。
次の表の上欄に掲げる医薬品(中略)、医薬部外品又は化粧品の種類に応じ、それぞれ同表の下欄に定める厚生労働大臣の許可を受けた者でなければ、それぞれ、業として、医薬品、医薬部外品又は化粧品の製造販売をしてはならない。(12条1項)
医薬品、医薬部外品又は化粧品の製造業の許可を受けた者でなければ、それぞれ、業として、医薬品、医薬部外品又は化粧品の製造をしてはならない。(13条1項)
アクセサリー・布もの・木工など
このページの2法には当たらない
税務は開業届と確定申告。ネット販売の表示は共通編へ。
お菓子・パン・あん類
食品衛生法の営業許可の定めがある
施行令35条11号の菓子製造業。施設の基準が論点。
石けん・リップ・バームなど肌に使うもの
薬機法の化粧品の定義に近づく
製造販売業(12条)と製造業(13条)の許可の定め。
条文の整理です。自分の作品が当たるかどうかは、それぞれの窓口に確認してください。
[!IMPORTANT] 自分の作品が「菓子製造業」や「化粧品」に当たるかどうかを、当サイトでは判断しません。 化粧品に当たるかは使用目的と表示で決まり、食品の許可は作る場所の施設基準で決まります。売り始める前に、食品は自治体の食品衛生の窓口、コスメは都道府県の担当窓口の案内を確認してください。開業届を出しても、これらの許可の代わりにはなりません。
共通の手続きは共通編へ
期限(「1ヶ月以内」ではなく確定申告期限まで)・判定軸・書く欄と本人確認・青色申告承認申請書の期限・扶養と失業給付は開業届の共通編へ。
まとめ
- 線引きの軸は「社会通念上事業と称する程度か」+売上と材料費の記録
- 材料の在庫があるので、帳簿が整うと青色申告特別控除の価値が出やすい。申請の期限は開業届より先
- お菓子は食品衛生法(菓子製造業)、肌に使うものは薬機法(化粧品の製造販売業・製造業)に、開業届とは別の許可の定めがある。当たるかは各窓口へ
- 期限・判定軸・書き方・扶養と失業給付は共通編へ
次は職業欄に何と書くか、収入の基準はいくらから確定申告が必要かへ。

